車のエアコンはどうしても車自体が移動する都合上、エアコンガスの通り道にゴムホースなどが使われているため、長い時間をかけて徐々にエアコンガスが抜けて効きが悪くなってしまう。
多少エアコンガスが減っているだけなら補充でも良いのだが、僕のRX-8はついにほとんどエアコンが効かない状態になってしまった。こうなるとエアコン配管内に空気が混ざって冷却効率が落ちている可能性が高いので、一度エアコン配管内の空気を全部抜いて、エアコンガスを再充填するしか無い。これを「真空引き」と呼んでいる。
一般的に自動車整備工場で作業を依頼すべき内容なのだが、道具さえあればDIYでも作業可能。今回はDIYで真空引きとガスチャージを行ったので、その方法を紹介する。なお、この記事を参考にして作業を行って不具合が生じたとしても当方は一切の責任を負いません。
注意:エアコンガスの大気開放は違法
今回の作業ではどうしてもエアコンガスを多少なりとも大気に放出してしまうことがある。現在使われているHFC-134aは過去のフロンガスに比べて環境負荷がかなり軽いとはいえ、基本的に大気開放はNGで回収することが基本。実際に業務用エアコンのガスを回収しなかった場合は管理者に対して罰金が課せられる。
ただ今回のように個人で少量を排出してしまうのは致し方ない部分がある。実際ガス式エアガンにも同じHFC-134aが使われていて、引き金を引く度にプシュプシュ放出されるのは問題ないことになっている。
真空引きに必要な道具
真空ポンプとマニホールドゲージ
カーエアコンの真空引きとガス再充填には
- マニホールドゲージ
- 真空ポンプ
という2つの道具が必要。
今回僕はAmazonでセット販売されているものを購入した。購入時の価格は約1.2万円。微妙に値段が安いものは接続金具が合わなくて別途用意が必要だったりするらしいので、レビューとかを見て簡単に使えるものを探す必要がある点が面倒だが、これさえ買ってしまえば真空引きはできる。
魑魅魍魎の中華工具を買うのが怖い人はアストロプロダクツなどからも販売されているので、そういうのを選ぶのもあり。
エアコンガス
また当然だがエアコンガスも必要。平成4年式以前の旧車に乗っている人以外はHFC-134aというエアコンガスで基本的にOK。(※ごく最近の新しい車はR1234yfという冷媒が採用されている場合もあるが、これはHFC-134aと互換性が無い)
僕の乗っているRX-8の場合はエアコンガスの規定量は450g。HFC-134aのエアコンガスは基本的に1缶200gなので2缶だとちょっと足りない。
というわけで真空引きするついでにエアコン配管内を通っているコンプレッサーオイルも多少抜けることを考慮して、添加剤も用意した。添加剤はオイル込みで50gなのでピッタリ450gになる計算だ。
拘る人はWAKO’S パワーエアコンプラスなどの高性能添加剤を入れるのもあり。5年前に施工したが実際結構な効果を実感した。
真空ポンプにオイルを入れる
今回購入した真空ポンプはポンプ内にオイルを入れるタイプ。オイルを入れていない状態でポンプを動かすと最悪破損するので、動かす前にかならず付属のオイルを入れよう。
オイルは蓋を開けて、横の窓を見ながら規定量まで入れるだけ。一度ポンプを動かすと少し減る場合があるので、その時は少しだけ継ぎ足せばOK。
規定量より多くオイルを入れると動作中にあふれる場合があるので、そこは注意が必要。
マニホールドゲージの増し締めとアタッチメント取り付け
マニホールドゲージには赤青黄のホースがそれぞれ取り付けられるようになっている。だいたい色を見ればわかるように、写真右に赤いホース、左に青いホース、そして中央に黄色のホースを取り付ける。
またマニホールドゲージの各部ボルトは微妙に緩かったりもしたので、増し締めをしたほうが良い。緩むとエアコンガスがそこから漏れてしまう。
マニホールドゲージのLOW・HIGHと書かれているノブは両方とも締めておく。
赤と青のホースの先端にはワンタッチカプラーを取り付けておく。このカプラーも微妙に緩かったので、シールテープを巻いて締め付け直しておいた。
カーエアコンの真空引きとガスチャージの作業方法
STEP1:下準備
まずはマニホールドゲージを車両に接続する。
RX-8の場合はボンネットを開けてラジエーターサブタンクの横に高圧側のポートが、ウォッシャータンク横に低圧側のポートがある。それぞれH・Lの文字があるのでわかりやすい。樹脂のカバーは反時計回りに回せば外せる。
高圧側に赤いホースを、低圧側に青いホースを接続する。
そして真空ポンプに黄色いホースを接続。
マニホールドゲージを適当なところにぶら下がれば準備完了。
STEP2:真空引き
まずは現状をチェック。エアコンは効かないが意外とガスは入っているらしくある程度の圧力がある。コンプレッサーが動いていないので高圧側・低圧側は同じ数値を示している(※高圧側と低圧側で目盛りの振り方が違うので、針の角度は異なっているが圧力は同じ)。
真空ポンプの電源をON。
そしてマニホールドゲージの低圧・高圧のノブを両方とも全開まで開く。
すると徐々にマニホールドゲージの値が下がって、大気圧より低い値になっていく。
30分ほど真空ポンプを回し続けて、エアコン配管内の空気を完全に抜く。
30分真空引きを行った様子がこれ。マイナス側に圧力計が振れていて、エアコン配管内が真空になっている事がわかる。
この状態で左右のノブを両方ともしっかりと閉め、真空ポンプの電源もOFFにする。この状態で10分ほど放置する。
10分放置した後の様子がこちら。圧力ゲージの値に変化がなければOK。
もし圧力ゲージの値が大気圧に近づいている場合は、エアコン配管のどこかに穴が開いている可能性がある。その場合はエアコンガスを入れても無駄なので、速やかに整備工場で整備をしてもらいましょう。
今回は問題なかったので、真空ポンプを外した。これで真空ポンプの仕事は終わり。
STEP3:エアコンガスチャージ1本目
先程まで真空ポンプを取り付けていた黄色いホースに、エアコンガス缶に接続する金具を取り付ける。緑色のノブを反時計回りに回し、中の針が一番引っ込んでいる状態にする。
エアコンガス缶に接続金具を取り付けて、黄色いホースに接続する。
緑のノブを一番奥まで締め付けて、
もう一度一番開いた状態にする。これで黄色いホース内にエアコンガスが通った。
マニホールドゲージの中央にあるパージバルブを一瞬押して、プシュッと黄色のホース内に残った空気を排出する。
低圧側のノブを開いて、ガスをエアコン配管内に通していく。
またこれ以降高圧側のノブは絶対に触らず、閉じた状態を維持する。
エアコンガスが車両の配管内に入っていくと、ガス缶がだんだん冷えてくる。手で握って温めたり、軽く振ったりしながらガスをエアコン配管内に入れていく。
15分ほどかけてエアコンガスをチャージしたが、まだガスが缶の中に残っている感触がある(液体がガス缶内にあるのがわかる)のに、これ以上ガスが入っていかなくなった。コンプレッサーが動いていないので、左右の圧力計は同じ値を示している。
そこでエンジンを始動し、エアコンをON。風量はMAX、温度設定は最低にして、外気循環かつ窓は全開にしてエアコンが最大出力を維持し続けるようにする。
コンプレッサーが動いているので、ガスがどんどん吸い込まれていくはず。中のガスがほぼ無くなるまで(※理屈上缶の中から完全にガスが抜けることはない)ガス缶を軽く振ってガスを注入する。
ガス缶の中身がなくなったら、低圧側のノブを閉める。
この状態で1本目のガス缶を外す。
STEP4:エアコンガスチャージ2本目
一本目と同様にガス缶を接続して、パージバルブを一瞬開いて黄色ホース内の空気を抜いておく。
低圧側のノブを開いてエアコンガスを注入する。
はじめは勢いよくエアコンガスが送られるためガス缶が一気に冷える。1本目と同様に軽く振ったり手で温めたりして、5~10分ほどかけてエアコンガスを入れる。
ガス缶が空になったら低圧側のノブを締めて、2本目のガス缶を黄色いホースから外す。
STEP5:添加剤を注入する
2本目と同様に黄色いホースに添加剤の缶を接続して、パージバルブを一瞬押して黄色いホース内の空気を押し出す。
低圧側のノブを開いて添加剤を注入する。
添加剤の中にはオイルが入っているので、マニホールドゲージより少し高い位置で上下逆さまにして、オイルがなるべく送られやすいようにする。添加剤は容量が50gと少ないこともあり、1~2分もすればすべての中身が入っていくはず。
添加剤の中身が無くなったら、低圧側のノブを締めて添加剤を外す。
STEP6:圧力の確認と片付け
最後に圧力を確認する。
エンジンを掛けてエアコンが動作している状態で、低圧側の圧力が25~45PSIの間にいれば問題なし(今回は42PSIだった)。
問題なければエンジンを停止させる。
低圧側、高圧側ともにポートからホースを外して、キャップを戻し、マニホールドゲージを片付ければ作業完了。
キンキンに冷えるようになった
作業後はこれまで扇風機程度にしか役に立っていなかったエアコンがバッチリと動作し、キンキンに冷えた風がダクトから送られてくるようになった。これで夏場でも快適にドライブできる。
真空引きもガスチャージも、理屈がわかっていればそう難しいことでもなく作業自体も1時間程度で完了する。ガス回収の問題などから基本的には整備工場に作業をお願いしたほうが良いと思うが、あなたが余程のもの好きなら一度試してみるのもありだとも思う。
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