実は仕事で荷物がたくさん載る車が一台必要になったので、最近その手の車を調べていた。本音を言えばハイエースかキャラバンが欲しいのだけど、中古でも車体がそこそこ良いお値段だし、維持費もそれなりに掛かってちょっとしんどい。それではとライトエースバンやNV200も見てみたが、サイズ感の割に荷室がそこまで広くないし、エンジンも古くて走らなさそうでなんだかいまいち。維持費のことを考えると軽バンが素晴らしく、荷物もたくさん乗ってすごく良さそうに思えてきた。
ハイゼットかエブリイか、新車か中古か
というわけで選択肢はダイハツ ハイゼットカーゴとスズキ エブリイの二択(+そのOEM車)となった。しかしハイゼットカーゴはもう2004年から基本設計が変わってないのがマイナスなポイントなのと、あのごてごてしたデザインが正直好きじゃない。なので値段も若干お得なエブリイから選ぶことに。旧世代モデルでも構わないのだけど、燃費など長期的に考えればフルモデルチェンジした2015年以降のモデル(DA17型)が良さそう。
ただ調べてみると、やはり軽バンはすごく人気が高いため10万km以上走った中古車でも思ったより高い値段で取引されている。乗用車グレードでも構わないのだけども、近年のキャンプブームで需要が高まったのか、こちらはさらにいいお値段をつけている。この値落ちのしなさはすごい。
…となると意外と中古を買うメリットが殆どない事に気がついてしまった。メンテナンスやリセールバリューまで考えれば、新車を買うほうがお得なのでは…?
滑り込みで5MTのJOINターボ2WDを購入
軽自動車を選んでおいて何なのだが、それなりに荷物を積んで山道を走ったり長距離移動することが想定されるので、動力性能を考えればターボ付きのグレードがいい(そうなると余計に中古が高い)。エブリイだとJOINターボという最上位グレードのみがターボエンジンとなる。グレードの上昇に伴う豪華な内装は正直どうでもいいし、何ならリアシートが常用グレードとほぼ同等になるおかげで荷室が若干フルフラットじゃなくなるのはむしろ困る。かといってNAはなぁ…。今どきの軽自動車は結構走るけども、所詮660ccのエンジンに多くのことを期待するのは難しい。4WDの安心感は大きいけど、悪路に行く機会はほとんどないので、軽さや燃費、パワー効率を考えたら2WDで良いはず。
…ところがJOINターボの5MTモデルが2021年の8月で生産終了するというニュースが耳に入ってきた。うーん、どうせ買うならマニュアル車がいいし…。
とりあえずスズキディーラーに行ってみた所、「期限ギリギリでJOINターボのMT車が買えるかもしれない」との返答を頂いた。発注をかけてもらったら、なんと翌日に購入を検討しに来た方は受付すらできないという、本当にギリギリのところで生産されることに。これはものすごくラッキーだったのかもしれない。
そんな感じで申込みから1ヶ月程度で納車。エブリイは超人気車種で3ヶ月待ちはザラらしいのだが、多分ちょっと特殊なグレードだったのですぐ手に入ってしまった。オプションはフォグランプとフロアマットのみ。スズキ セーフティサポート(自動ブレーキ等)が標準装備されない最後のモデルで、それもつけなかったので、値引きも含めるとかなりお得なお値段だった。
軽自動車枠をめいいっぱい使ったボクシーなスタイルが結構かっこいい。軽貨物車両らしかぬクールカーキパールメタリック(緑)も、日が当たるとパールが光ってなかなかいい。個人的にはもっと明るい色があってもいいのにな~とは思ったけど…。設定はあるが、街中で紫のエブリイとかほぼ見たこと無いし…。
最上位グレードなので内装は乗用車グレードにかなり近い。ペットボトルホルダーとか小物入れとかがめちゃくちゃたくさんあってすごく便利そう。シートのサポートは緩いが、フカフカで悪くない。CDプレイヤー付きのラジオが純正オーディオなのが貨物車っぽさを醸し出す。
JOINターボは妙にかっこいいメーターが付いている。タコメーターがあるのはマニュアル車だけ?
リアシートも乗用車グレードに近いもので、ドアにはパワーウィンドウも付いている。正直ここは安いグレードのもののほうが、畳んだときに荷室がほぼ完全にフラットになるので貨物車としては嬉しいのだが…。背もたれの角度調整や前後スライドができず、身長170cm程度の男性が座ると少し足元の狭さを覚える(乗用車と違い足が前席の下に入らないため)ので、小柄な人か子供向けな感じ。ちなみにリアヒーターが付いていて、スイッチをONにすると温風が吹き出して前席まで暑くなる。真冬はこの広大な室内を暖めるのに重宝しそうだが、どうせならリアクーラーにしてほしい。
シートを起こした状態でもコンパクトカーは余裕で超える積載量があるが、シートを倒すと巨大なラゲッジルームが広がる。縦に寝られるので車中泊も余裕。何故か左側のリアシートだけシートを戻すときにうまくはまらない時がある。このあたりがスズキっぽい。
そういえばスライドドアがうまく閉まらないという話もあるらしいが、この個体はスムーズに閉まってくれる。ただ運転席のドアが半ドアになりやすいように思う。ドアが薄く軽いのが原因な気もするが…。
トルクフルでキビキビ走る
まだ少ししか走れていないのだが、1t足らずの車体がキビキビ走って楽しい。1~3速がクロスしているので、少し離れた4速に上げた途端にもっさり感が出てくるが、3速を少し引っ張れば(軽自動車なりに)ギュンギュン走る。新車だからかシフトの動きが渋めなので、ある程度乗ったらミッションオイルを変えたいなと思っている。慣らし中で回していないが、回さずともトルクも十分にあって坂道を登るのも全く苦じゃないのが嬉しい。エンジンは非常に始動性がよく、アイドリングはとても静かで振動も皆無。それなのにアクセルを踏んだ途端に勇ましいノイズが鳴り響くから不思議。エンジンルームからの熱はふくらはぎの裏にじわじわ伝わってくるので断熱したくなる。
アイポイントが割と高いのと、どうしても軽自動車なのでトレッド幅の狭さ故にコーナリングはどうなのかなと思っていたが、普通に走っている分には全く不安がない。どう見てもペラペラなボディなのに、運転しているとしっかり感があるからすごい。空荷の状態だとリアの突き上げが大きくぴょこぴょこするのが気になるが、荷物をそこそこ積めば解決しそうな感じ。小径タイヤなので路面の凹凸を拾いやすいのはご愛嬌。ただ貨物用ではあるが12インチホイールでエアボリュームたっぷりのタイヤ故かそこまで乗り心地は悪くない。かなり上等な軽トラックといった感じ。
シートポジションもきっちり出せるが、ハンドルがちょっと低い位置にあるのは長時間運転するときに疲れを誘発するかもしれない。左に寄ったペダル類は構造上仕方がない。当然ながら見切りはめちゃくちゃいい。非常に大きな窓は全てUVカットだが、赤外線はカットしていないので右から日が指すと腕がジリジリ熱い。
スズキ最後のシンプルなターボ軽バン
2021年9月1日に発表されたとおり、8月でJOINターボのMT車は廃止され、全グレードにスズキセーフティーサポートが標準装備された。こんな貨物車両なのにターボのMTなんていう、明らかな趣味用グレードに高い需要なんてあるはずがないので当然である。普通の人はエブリイワゴンを買ったほうが確実に幸せになれる。
ただこのJOINターボMT、NAの5MTとはギア比が違ったり最終減速比も変更されていたりと、地味に高速寄りな仕様になっていて結構面白い。走りも軽快で楽しいし、余計なものが一切ついていないシンプルさが心地よい。勝手に止まってくれないが、車線をはみ出して怒られることもない。自己責任と自己満足の世界がそこにはある。時代に取り残されたいカーマニアのための最後の車だったかもしれない。
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