念願の車高調を手に入れて、車高が低くかっこよくなった愛車を見てニヤニヤしているそこのあなた。とてもよく分かる。
でもなんだか乗り心地が悪かったり、走行性能が悪くなってたりしませんか?その悩み、0円で解決できるかもしれない。
車高調キットをそのまま付けると走行性能が悪化する場合がある
車高調キットを買ってそのまま付けた人はこのような悩みがあるかもしれない。
- なんだか突き上げ感が凄い
- ちょっとした段差でガツガツ衝撃が来る
- 強めにブレーキを踏むとすぐタイヤがロックしたりABSが効いたりする
- 少し速い速度でコーナーを曲がろうとするとフロントタイヤがすぐに鳴く
これの原因は非常に簡単。ダンパーが底突きに近い状態で使われているため。
ダンパーが底突きしているのはいわゆる「ノーサス」状態と同じなので、車やタイヤが本来持っている性能を全く活かせていない状態。乗り心地の悪さは我慢できるものとしても、性能低下は明らかに危ない。
車高調キット標準スプリングは少し柔らかいことが多い
なぜこのようなことが起こるのか?サーキット走行を強く意識したモデルは違う場合もあるが、特に安価な車高調キットは街乗りを意識しているため、標準スプリングは少し柔らかめのものが多いのがその理由。
実際に↑のブログ記事では僕が実際に買ったマツダRX-8用のBRITZ ZZ-Rで見てみよう。リアの足回りの部分だけ抜粋する。
d:ダンパー荷重(kgf) d=w’×lr | 310 |
---|---|
S’:有効ストローク長(mm) | 67.5 |
sr:バネ定数(kgf/mm) | 6 |
これは1G状態(車が地面に完全に接地して静止している状態)でダンパーに掛かる荷重が310kgfで、ダンパーの有効ストローク長(バンプラバーを除く)が67.5mm、キット標準スプリングのバネの硬さが6kgf/mmだったことを示している。
ダンパーの縮み量と許容G(バンプラバータッチするまでにかかったG)は以上のように計算できるので、1Gでのダンパーの縮み量(=伸びストローク)と許容Gはそれぞれ
伸びストローク=310×1÷6≒51.7mm
許容G=67.5×6÷310≒1.3G
となる。つまりダンパーのストローク長67.5mmの内、1G状態ですでに51.7mmも使っていて、残り(縮みストローク)は67.5-51.7=15.8mmしかない事がわかる。許容Gは1.3Gなので、路面上のちょっとした凹凸で大きめの入力があると、バンプタッチして突き上げ感があるはず。
この数値、実は車高調キット標準としては比較的まとも。物によっては許容が1.1Gぐらいしか無かったり、ひどいものは1Gですでにバンプタッチしていたりする。そういうものは本当に最悪な乗り心地で、最初に上げたような悩みを全部持っているはず。
車高調はあくまでも「キット」であり、それを正しく使うも間違って使うもユーザー次第。とはいえせっかく高いお金を出して買った車高調で辛い思いをするのは悲しすぎる。できることなら追加費用0円で改修しよう。
プリロードを掛けて許容Gを増やそう
実はスプリングにプリロードをかければ、許容Gを増やして乗り心地を改善することができる。プリロードに関する基礎的な話は↓を参照。
要するにプリロードをかければその分ダンパーの初期位置が移動するので、縮みストロークを増やすことができる。それによって許容Gも増やせる。
先程のRX-8のリア車高調を例に取ってみる。ここに10mmのプリロードを掛けると、1G状態でのダンパーの縮み量(伸びストローク)は51.7-10=41.7mm。逆に残り(縮みストローク)は15.8+10=25.8mmとなる。この時の許容Gを計算すると、
許容G=1+(30.8×6÷310)≒1.5G
となる。1.5Gの許容があれば、通常の街乗り~ミニサーキットでの走行ぐらいまでであれば、路面の凹凸などで瞬間的にそれ以上の入力が来てバンプタッチしても、すでにそこそこの荷重に耐えている状態なので乗り心地もそこまで不快感はない。
当然ながらプリロードを10mmかけたらその分車高も上がる。全長調整式の車高調なら全長を10mm下げれば、元の車高に戻せる。
プリロードはかけすぎ厳禁
プリロードはかければかけるほど良いものではない。むしろ一般的に車高調に使われる直巻スプリングの場合、かけすぎると逆効果になる場合がほとんど。5mm~10mm程度のプリロードが基本的に限度で、15mm以上掛けると乗り心地の悪化やスプリングの破損に繋がる恐れがある。
極端に変なスプリングが組まれていない限り、まともな車高調であれば10mm以内のプリロードで十分具合が良くなるはず。
プリロードで解決しない場合は素直にスプリングを交換する
ダンパーのストローク長と標準スプリングの兼ね合いで、どうしてもプリロードだけでは快適な乗り心地を実現できない車高調も実際に存在する。その時は潔くメインスプリングをよりレートの高い物に交換するべき。
間違ってもこのときにヘルパースプリングなんて入れてはいけない。今の問題は縮みストローク不足にあるので、ヘルパースプリングを入れると確実にダンパーが底突きして破壊される。
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