車高調のスプリング変更によるメリット・デメリット

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2019年11月に一気にメンテナンスした際、一緒に車高調のスプリングを変更した。これによって(理屈上では分かっていたけども)いろいろと体感できたことがあったので、書いていきたい。

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スプリングを変更した目的

元々装着していたのは、MAQS製のスプリング。スペックは、

  • フロント:ID62 200mm 12kgf
  • リア:ID62 150mm 8kgf

で、これをBLITZ ZZRに新品時から装着して2年ほど使用した。正直なところこれといって性能面で大きな不満があったわけではないが、気になる点はいくつかあった。それは

  1. 乗り心地のごつごつ感があんまりよくない
  2. リアスプリングがヘタる

ということ。これはMAQSのバネが細く巻き数が少ない設計になっているので十分あり得るのだが、個人的には特にヘタる点をあまり好ましく思っていなかった。

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またこの冬はタイヤをZESTINO ACROVA 07AからATR-K Sportへ変更した。グリップレベルが上がるので、レートアップが必要ではないかと考え、この機会に交換してみたのだった。

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ラルグス製スプリングへ変更

そこで僕が選んだスプリングが、ラルグスの補修用スプリング。これ、結構細かくスペックが選べるうえに、かなり安価で手に入るのが魅力的。そもそも安価な車高調に採用されているID(内径)62mmのスプリングは選択肢が少ないので、必然的にこの辺りから選ぶことになるのだが…。

  • フロント:ID62 200mm 14kgf
  • リア:ID62 160mm 10kgf

と、前後ともに2kgfのレートアップを行い、リアについては自由長を10mm長い物をチョイスした。これはRX-8用BLITZ ZZRでの吊るしのバネと同じ自由長だ。

MAQS製に比べると、ラルグス製のバネは線は太く、巻き数は多い。さらにリアの自由長は長い物を選んだため、バネ自体の特性としては動きがしなやかになるだろうと予想される。

ただラルグスはスプリングの最大許容ストローク/最大許容荷重を公表していないので、どの程度までストロークしていいのか不明なのが困るポイント。まぁMAQSとそんなに変わらないと思うが…。

バネレートアップの効果

バネレートアップを行うと何が起こるのか、というと、 かかる荷重が変更前と変わらないのであれば、

  1. ピッチング量の減少
  2. ロール量の減少

が発生する。サーキット走行を前提に考えるのであれば、姿勢が安定するので、ドライバーは乗りやすくなったと感じるかもしれない。特に高速サーキットであればその恩恵は感じやすいはず。基本的に脚が動きずらくなるので、ハンドルを切った時のレスポンスも良く、ブレーキを強く踏んだ時もタイヤにより強く力をかけることが可能になる。

とにかくシャコタンを追求する人であれば、路面のギャップを拾ってもタイヤのストローク量が減るので、より攻めた車高にすることが可能になる。車高短を極めたい人用にやたらと硬いスプリングが売ってあるのはこのため。

レートアップのデメリット

じゃあとにかく硬ければいいのか?と言われれば、もちろんそんなことは無い。むしろ硬すぎることによるデメリットは大きい。

  • 高いグリップを持つタイヤが必要になる
  • ロール・ピッチングによる適切なアライメント変化が起こりずらい
  • 乗りこごちが硬くなる
  • 車高が下げずらい

例えば全く動かないサスペンション(リジッドサス)の車でブレーキを踏んだ時、前に移動した荷重を唯一受け持つのはタイヤだけになる。サスペンションを介さずに一気に力がタイヤに伝わるので、許容量を超えた力は逃げていく=タイヤが滑っていくことになる。元々サスペンションを持たないレーシングカートのタイヤはこれ用に開発されているので問題は無いが、そうでない市販車用のタイヤでこれを行うのは危険極まりない。硬く動きずらいスプリングにした場合は、高いグリップ力を持つタイヤが必要になる。

またロール・ピッチが減るので、姿勢変化に伴うアライメント変化が起こりずらくなる。これによって結果的にメカニカルグリップが下がることがあり得る。そもそも市販車の純正スプリングは非常に柔らかいので、基本的にはある程度サスペンションを動かしてあげた方が設計の意図に沿っている。

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あとは単純に乗りこごちが硬くなったりする。硬すぎるスプリングの動きはダンパーの減衰力を高めることで制御しなければならないが、当然そうするとダンパーの力もたくさん必要になり、それ用のものではないとひどく跳ねてしまう可能性がある。

1Gでの縮み量減少=伸びストロークの減少が発生する

ところで、スプリングレートを高くすると、乗りこごちが硬くなる以前の問題として、サスペンションの伸びストローク量が減少する。スプリングにプリロードをかけない場合、伸びストローク量=1Gでのサスペンションの縮み量なので、RX-8の場合におけるプリロード0の場合のダンパーの伸びストローク量はそれぞれ以下の通りとなる。

バネレートフロントリア
変更前(12K-8K)41.69mm38.75mm
変更後(14K-10K)35.73mm31.00mm

実際にはブッシュのたわみなどがあるので厳密にこの通りにはならないが、フロントで5.96mm、リアで7.75mmだけ伸びストローク量が減少する計算になる。

車高調を購入して早々、車体に組みつけもせずに分解してしまった。それはそう、このBLITZ ZZ-Rがどれほど使えるものなのかを調べ、...

この辺の計算が詳しく知りたい人は↑の記事を参照。

伸びストローク量が減少することによってどんな弊害が起こるかといえば、強い横Gがかかった際に内側のタイヤが接地しない状態=インリフトが発生しやすくなる。もちろんレートアップによってロール量が減っているのだが、それでも道の上には多数の凹凸、サーキットにはいくつもの縁石が存在し、瞬間的なインリフトなんてものはざらに起こる。

実際にスプリングを変更して起こったこと

実際にスプリングを変更したことによって起こったことを書いていく。

1.レート&自由長UPによって車高調整範囲が狭まった

バネレートを高くしたことによって、1Gでの縮み量が減少=車高が上がってしまった。もちろん、ZZ-Rは全高調整式の車高調なのでブラケット側で調整してしまえばいいのだが、リアスプリングに関しては自由長を10mm伸ばしたので、リアサスペンションは下げる方向への車高調整の領域がゼロになってしまった。

皿ナットを2枚抜けばもうちょっと下げられるけども、そこまでするのもなぁ…という感じだったので、事実上決め打ち状態となったリアの車高に合わせてフロント車高を決めざるを得なかった。RX-8はサスペンションの構造上、リアの車高調整範囲が狭いので、初めから分かっていたとはいえちょっと困る。

2.乗りこごちが柔らかくなった

レートアップしたのにこれ如何にという話ではあるが、乗りこごちが良くなった。ラルグス製のスプリングはMAQS製よりも巻き数が多いため、バネの動きがしなやかで硬さを感じづらい。もちろんレートアップに対応して街乗りでの減衰は少し上げたし、大きな凹凸を拾った時にはそれなりの動きをしてしまうが、路面の小さいギャップに対しては非常に柔らかく動いてくれる。

3.サーキットでのコーナー進入で不安定感が出た

車はバチっとメンテナンスしたし、タイヤはATR-K Sportに履き替えたし、後は走るだけ! ってことで、い...

↑の記事にしきりに書いてあるが、コーナー進入時の不安定感が強かった。これはもう単純に、最も荷重が抜けるリアのイン側タイヤが接地していない=インリフトしていることが原因。つまり伸びストロークが不足しているのだ。

「たった8mm弱のストローク減少でそんなことが起こるのか?」と思うかもしれないが、実際起こったのだから仕方がない。

4.一部のコーナー脱出時にイン側のタイヤが空転する

美浜サーキットの最終コーナーのように、一気に坂を駆け上がりながら脱出する際に、イン側のタイヤが接地せず、イン側のタイヤが空転してしまった。レートを上げる前からそこそこ発生してはいたが、より顕著になった印象。これはオープンデフに毛が生えた程度の純正スーパーLSDをとっととやめ、トルセンなり機械式なりのデフに変えれば解決される。が、そんなことをする気は(主に予算的な都合で)さらさらないので、どうにかして脚で解決したい。

5.高速コーナーでの安定感が出た

美浜サーキットにおける1コーナー~第1ヘアピンまでの緩い右コーナーでは高い安定感があった。これはもちろんタイヤを変更した影響も少なからずある。しかし明らかにロール量が少なく姿勢が安定した結果、アクセルの全開区間が増え、第1ヘアピンまでにがっつりレブリミッターに当たってしまうまでになった。

6.ブレーキングでの安定感が高まった

ドーン!と真直ぐブレーキングするタイミングにおいて、ノーズダイブ量が減ったためか安定感が高くなった。

7.動きの機敏さが少し悪化した

MAQS対比でラルグスはバネの巻き数が多く、動き出しがしなやかなこともあってか、ハンドル切り始めの機敏さが悪化した。これはダンパーの減衰力を高めることで対処は可能だったが、伸び・縮み両方が変化してしまうZZ-Rの場合は伸びスピードの遅さ=接地性の悪化にもつながるので、単純に解決するわけではない。

8.コーナリング中の姿勢が悪くなった

低速コーナーが主体のミニサーキットだと、強い横Gを長時間かけ続けるタイミングが少ないので、硬すぎるバネは勝手に元の状態に戻ろうとして、コーナリング中にふらつきを発生させてしまうことがあった。

またロール量の減少=キャンバー変化の減少により、純正の調整範囲でほぼ最大まで付けているキャンバー角では不足してしまっていた。

スプリング変更は様々な性能とのトレードオフ

というわけで、今回のスプリング変更はいいこともあったが、「ミニサーキットでタイムを削る」点においてはどちらかといえば失敗に終わった印象だった。ただレートアップやバネの特性の違いによる乗りこごちや操縦感覚の違いについては想像以上に変化して面白かった。やはり様々な性能はトレードオフの関係にあるので、単純にどこかの性能だけをよくするというのは難しい。

正直なところ、リアにヘルパースプリングを入れることで伸びストロークを確保できれば、いろんなことがかなり改善されそうだが、ZZ-Rの構造上それはちょっと難しいのが悩みどころ。現時点では素直に12K/8Kのバネレートに戻すのが正解かなぁと考えている。