格安のアジアンハイグリップタイヤであるKENDA KAISER KR20Aを、街乗りからサーキットまで使った感想をまとめる。使用期間は15か月、総走行距離は1.6万kmで、その間一度もタイヤを履き替えたりローテーションを行ったりはしていない。サーキット走行はグリップのみだ。
タイヤは4本すべてが2016年製で、サイズは235/45R17 94W。UTQG表示はTreadwear:180、Traction:AA、Temperature:A。
サーキットでの印象
サーキットでは合計8回走行した。前半の4回が純正サス、後半が車高調導入後となる。
空気圧は温間2.3~2.4kg/cm3ぐらい
このタイヤ、サイドウォールもトレッド面も(ハイグリップタイヤとしては)非常に柔らかい構造になっているので、ある程度エアを張らないとタイヤがヨレて仕方がない。というか、ヨレすぎて変なところを使ってしまった結果グリップしなくなるので、ちょっと張り気味がいい感じ。車重にもよるだろうが、温間2.2kg/cm3ぐらいまで下げるとかなり感触が悪くなる。
ドライグリップ★★★☆☆
最新の国産ハイグリップタイヤを★5つとするならば、これぐらいの評価が妥当だろう。でも17インチで送料入れても1本9000円しないタイヤがこんなにグリップしていいんだろうか…、と思うぐらいにはグリップする。車高調が入ってる以外ドノーマルの僕のRX-8で、4割ぐらいすり減ったKR20Aを履いて美浜サーキットを47.1秒で走れるんだから、一体どこに文句をつければいいんだろうか。ドライバーの技量や相手の車にもよるが、国産タイヤを履いた車をカモれるぐらいのグリップはある。
レイングリップ★★☆☆☆
期待できない。雨の美浜サーキットを走った経験から言わせてもらえば、ハイグリップでないスポーツタイヤのほうがグリップレベルが高いのではないかと思うレベルだった。排水性が悪いのか、あるいはタイヤが冷える状況に弱いのか、とにかく路面を掴んでいる感じがなかった。純正サスが入っていた状態でこれだから車高調だとかなりいまいちかも。サーキットではレインタイヤとして使うことはできないと思う。
熱入りの早さ★★★☆☆
冬場であればそこそこ時間がかかるし、逆に夏場であれば一発で熱が入る。熱入りの速さに関しては路面温度にひどく依存するので、なかなか評価しずらい。ただ極端に温まりが悪いタイヤというわけではないので、冬場は最初の数周で注意する必要はあるものの走りづらさはない。
熱ダレ★☆☆☆☆
純正サスで走った時は「熱ダレしない」って書いたけども、ごめんなさい。正直全然ダメだった。特に夏場はほんとダメ。これは高めの内圧じゃないと走りずらいってのも影響はしていると思う。昨年の9月にTSタカタサーキットを走った時に、コースインして最初の計測1周目以降は一気にタレてタイムを出すという意味では全く話にならなかった。ただ、いったん走行をやめてタイヤが常温になるまで待てば再び同じようなグリップに回復するので、複数回の走行セッションがあるのであれば、最初の1周目にだけ集中すればタイムが出せないこともない。
では冬場はどうかと言われれば、熱が入った後にゆっくりと落ちていく感じ。夏場と違い極端に落ちるというほどでもないが、同セッションで複数周のアタックラップを行うのはやはり厳しい。
タレたあとのグリップは体感的に2割減という感じで、ハンドルの手ごたえは下がるしリアの動きはナーバスになるしと、「熱ダレ」ってのはまさにこういうことを言うんだなと体感できる。熱ダレした以降は2割減のグリップが維持できるので、絶対的なタイムを望まず、こういうものだと思って走れば連続周回も問題なくできる。
操縦性★★★★☆
縦も横も、もちろん斜めも癖がなく一様にグリップする。さらにタレた時にも極端にグリップレベルが下がるということもなく、流れ出しも穏やかでわかりやすい。タイヤの突然の裏切りにおびえる必要はないのでとても安心して攻めることができる。
一方でタイヤが柔らかいので、カチッとした手ごたえはなく、言ってしまえばハンドリングは少しダルい感触がある。そのため必要以上にハンドルをコジりたくなる気持ちにされることもあるが、コジったところで曲がるわけでもなくタイヤの肩ばかり使ってしまう結果になる。逆に言えば適切なアライメントが取れているのに肩が削れていたら、それはハンドルのこじりすぎということ。僕は履き始めてすぐにこれをやってしまったので、以降は肩が無くならないようにちょっと気を使って走っていた。
耐久性★★★★★
なぜだかさっぱりわからないけど、このタイヤとにかく減らない。タイヤ全体で路面を掴むようなグリップの仕方をするせいかのか、コンパウンドが溶けてなくなっていく様子は顕著には見られない。だから溶けるというよりも普通に削れて無くなっていく。そういう意味で、一般的なハイグリップタイヤよりも耐久性は高い。
ただでは溝があるからまだグリップするのか、と言われればそれは全く別の問題。減ったら溝が浅くなる分だけ発熱量が減る為か、浅溝になればなるほどグリップ感は徐々にではあるが減っていく。これは使い始めから1年が経って経年劣化してきたというのもあるとは思う。なのに減らないし溝がまだ残っているのでなかなか捨て時に困るタイヤだった。ただ、タイムを気にせず遊ぶだけなら終盤でも十分グリップするので、最後まで使いきってみるのも悪くないだろう。
街乗りでの印象
僕の使い方の場合、サーキット走行以外の大半は高速道路での移動が占めたとは思うのだが、普通の買い物からワインディングロードを流す程度まで、夏の焼けるような暑さの中や雪が降る凍えるような雪の寒さ、そして晴れの日も雨の日も日々の生活でごく普通に使った。
ドライ性能★★★★★
果たしてここに文句をつけることができる人はいるのだろうか。とりあえず道路交通法にのっとって走っている分にはドライグリップの性能に不満は何一つないし、もちろんハイグリップタイヤということもあってパニックブレーキなどの急制動でもかなり短い距離で止まることができる。
レイン性能★★★★☆
サーキットでの印象から一変、街乗りレベルであればレイングリップに何の不満もない。サーキットのような限界域でなければ、気持ち速いスピードで雨の山道を巡行しても特に何か不安を感じることはなかった。街中も山道も高速道路も安心して走行できた。ただ最初から6.3mmと浅溝でブロックパターンも大きいため、雨量が多い時のレイングリップ性能は決して高くはない。
静粛性★★★☆☆
これっぽっちも静かではない。走り出した瞬間からザラザラとした音が4つのタイヤから鳴り、普通のタイヤを履いた車から乗り換えるとかなり耳障り。だけども唸るような大きな音が鳴り響くわけではないし、「まぁこんなもんか」と思えるのであればそこまで気にならないし、そのうち慣れる。街乗りはもちろん高速道路を巡行していてもその音は響くけれども、僕はハイグリップではないスポーツタイヤであるATR-SPORT2を使っていた時からオーディオの音量は上げていない。もちろん車内での会話にも全く支障はない。またハイグリップタイヤゆえのゴムの柔らかさから路面の小石を巻き上げて、それがタイヤハウスの中でカラカラと響くけども、それは不可抗力。多分マフラー交換をしている車であれば気になるものでもないだろう。
乗り心地★★★☆☆
いわゆる乗り心地のいいタイヤではない。でもハイグリップタイヤということを考えれば全く悪くなく、むしろいい部類になると思われる。ひどくごつごつした乗り心地、というわけではないので、街乗りするのが苦になることはない。
耐久性★★☆☆☆
僕がKR20Aを使用した期間は、2017年1月~2018年4月までの15か月。その間の走行距離は16,678kmだ。新品で実測6.3mmだった溝は最終的には3mmまですり減っていた。もっと使おうと思えば使えたけども、サーキットでのグリップが低下したことと、中古タイヤとして売りさばくことを考えたため、すってんてんになるまでの使用はしなかった。
サーキットでは減らないといっても、さすがにハイグリップなだけあってコンパウンドは柔らかく、いわゆる普通のコンフォートタイヤ等に比べれば耐久性は圧倒的に劣る。実際耐久性の指数であるTreadwearは180とかなり小さい値。しかしサーキットの時の印象と同じく、一般的なハイグリップタイヤに比べると減りは少な目で、体感的な印象だが特に残り3~4mmぐらいになってきたころからさらに減らなくなったような感じさえあった。そもそも1.6万km使ってあと3mmも残っているのだ。というわけでサーキット/街乗り兼用で履きつぶすのには(価格から言っても)もったいないと感じてわざわざ街乗り用タイヤを用意するまでもない。
サーキットと街乗りを兼用できるハイコストパフォーマンスタイヤ
というわけで、KENDA KAISER KR20Aは、
街乗りからサーキットまで履き替えずに使い倒したい!
という僕のようなめんどくさがり屋には最適なタイヤだった。熱ダレする前であれば割とタイムが出るので、うまくやれば国産タイヤユーザーをカモることもできるだろう。連続アタックは熱ダレという点から厳しいところがあるものの、それさえ考慮すれば猿走りしても別に問題はないし、グリップ感にも癖がない。しかも価格が安く、なぜかあんまり減らない。ゆる~く楽に低コストで、でもがっつりアタックもしたいユーザーにうってつけだと言えるだろう!
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